格付け会社の怪

先日、スタンダードアンドプアーズ(S&P)という格付け会社が、わが日本国政府発行の国債の格付けを下げたことについて、総理大臣菅直人閣下が、「そういうことは疎いので」とやらかして騒ぎになったことは、1月31日の記事で触れた。

ま、菅直人の間抜けさ加減については、置いておくとして、マスコミが、この格付け会社がやっている格付けなるものについて、きちんとした判断をしないまま、やれ、国債の評価が下がったから財政再建だ消費税だ、と恐怖をあおったり、だから日本人は世界を知らないなどとしたり顔で言うのは犯罪的行為だ。

なぜ、犯罪的行為なのか。それを明らかにするために、まず、格付け会社とはそもそもなにをやっているものなのか、おさらいしておこう。

企業などの発行する社債などの債券(すなわち借金証書ですな)の評価=信用度、たとえば、その債券を買っても損をしないかどうか、つまり、その債券=借金証書がちゃんとものをいって、そのときがくればその借金の借り手がきちんと借金を返すかどうか=債券が現金化できるかどうか、あるいは、約束された利息がちゃんと支払われるかどうか、といったことは、債券を買おうとする人=金を貸す人にとってはすこぶる重要な情報だ。

そこで、登場するのが、この債券の評価を商売にする格付け会社という名の会社だ。

ちょっと前までは、格付け機関などと、さも、公共性をたっぷりもっているような名で呼ばれていた(今でもわが日本国では、一部の格付け会社は金融庁によって指定格付け機関と呼ばれている。)

だから、どこかの国の政府機関か、はてまた、国際連合の機関かと間違うが、そんなことはない。ただの民間会社だ。上記のS&Pやムーディーズなど有力な格付け会社はアメリカ合衆国のれっきとした民間会社だ。

さて、格付け会社も、会社である以上は稼がなくちゃならない。

じゃ、どうやって稼いでいるのかというと、これが、なんと、債券を発行する会社から格付けを依頼され、その手数料名目で金を受け取って稼いでいるのである。

株取引で巨万の富を築いたアメリカの大富豪ウォーレン・バフェットはムーディーズの最大株主でもある。彼は、アメリカでは企業が社債を発行するときは必ず格付け会社から格付けを取らなければならない仕組みになっていることをとらえ、制度的に手数料が入ってくるビジネスは儲かるから株主になっている、自分で株を買うときは格付けに頼らず自分で調べる、とのたもうているそうだ。つまり、格付け会社の仕事は信用しないが、儲かればそんなことはお構いなし、というわけなんだが、なんでしょうね、これって。

ワオ!

これ、利益相反という有名な話ですな。

たとえば、あの「白雪姫」。あの物語で、意地悪女王が、鏡に向かって「世界で一番綺麗なのはだあれ」と聞くでしょう。鏡が鏡でいられるのは、意地悪女王が鏡を壁に掛けている間だけ、自分の気に入らない答えが返ってきたらぶちこわされてしまうということだと、鏡はどうするか。鏡として生き残りたければ、色よい返事をするに決まっている。

鏡が格付け会社、意地悪女王が債券発行会社だとしたら、この格付け会社というものが、手数料をもらう相手の会社が発行する債券の評価について、実態とは異なる評価をする可能性が、いついかなる場合にあっても100%ないと断言できるだろうか。

さらに加えると、格付け会社の評価なるものは、過去の実績や市場の評判などから将来はこうなるだろうという、予測とか予言に過ぎないのであって、世の中、一寸先は闇なのに、神ならぬ人間の予測や予言がどこまで確実性をもつのかという根本的な疑問もある。

事実、今世紀に入って早々、アメリカはテキサスのエンロンなるエネルギー取引会社が、当時としては負債総額でアメリカ市場最大の破綻をしたが、格付け会社は破綻直前までエンロンを投資適格と、間抜けにも判定していた。

また、サブプライムローン問題以降、世界経済は不況の中にあり、日本の学生さんの就職難や中小の事業者さんの苦難はもちろん、世界中が苦しんでいるわけだが、そもそも、サブプライムローンという最終的には誰も借金を返さない借用証書を細切れにしてばらまいた債券に、大丈夫、信用できるから売買してオーケーとお墨付きを与えたのは、ほかならぬ、これらの格付け会社だった。

サブプライムローン問題は、アメリカの金融資本が世界を手玉に取った一種の詐欺事件だったが、この世界的詐欺事件の主役の一人は、サブプライムローンの細切れ入りの債券に、優良な格付けを与え、結果的に信用不安といういわば経済活動にとってのウィルスを世界中にばらまくことになった格付け会社だったと、ブログ主は思っている。

という次第で、ブログ主のような経済音痴でも、ネットで調べれば、格付け会社の格付けなるものがかなりいい加減で、当てにならないものであることはすぐにわかる。だから、格付け会社の格付けなるものをかつぎ回って、あることないことない交ぜにした虚偽情報を垂れ流すのが、どんなに犯罪的なことかもすぐにわかる。

そうだというのに、マスコミの諸君の報道は、いったい何なのか。記者クラブで麻雀・花札で遊ぶのに忙しくて勉強している暇がないか。それとも、記者クラブでとぐろを巻いていれば、財務省だかなんだか知らないが、発表資料がごまんと下げ渡されて、それを右から左に流していれば、デスクに怒られない程度の出席原稿くらい簡単にでっち上げられるから、まじめに勉強なんて、ばかばかしくてやってられないのか。

でもね、そんな、格付け会社なるものについての初歩的な勉強もしないまま、国債の評価が下がったから、さあ大変だなどと、例のオオカミが来たよとデマを叫んでついにはすっかり信用を失った少年のようなことをしていると、そのうち地獄に堕ちるよ。

ダボス会議なる面妖な会合と例によってあの菅直人

世界経済フォ−ラムという団体が主催する会合が、冬のスイスのリゾート地で開かれている。あの菅直人が、政府専用機を使って、この会合に出席している。

政府専用機を飛ばすと、いったいいくらかかるんだ。数千万円?

そんな費用をかけてまで出る値打ちがあるのか、この会合は。

元々、スイスの大学の教員が始めた西ヨーロッパの経営者の会合が、企業の協賛金などを集めて規模を拡大し、いつの間にか、菅直人や、総理大臣当時の麻生太郎までもが、はるばる極東から、大金をかけてまで出席するような会合になったらしい。

どうも、胡散臭い団体の胡散臭い会合ですな。ウィキペディアによると、世界経済フォ−ラムなる団体は、国連経済社会理事会のオブザーバーだということだそうだが、そんなイチジクの葉っぱみたいな肩書きを着けたところで、いわゆる欧米エリートと金融資本家及び一部の産業資本家による、表面的にはともかく核心部分では実に閉鎖的な結社あるいはクラブのようであるし、いわゆるグローバリゼーション、すなわち国際的な商取引に関して自分たちの利益の極大化にとって都合の悪い制約を撤廃し、世界を弱肉強食の単一市場にしろと主張する利益団体のようにしか見えない。

そうではない、地球温暖化など環境問題にも積極的に関わっている、との指摘があるかもしれないが、環境問題も二酸化炭素の排出権取引に見られるように、国際的な金儲けのビッグチャンスになるという側面があることをお忘れなく。

そんな会合に、菅直人が、国民の税金をたいそう支出して、あのTPPとやらの、関税自主権を放棄し、農業始め国内地場産業が大打撃を受ける亡国政策断行の決意というか妄想を表明しに出かけた。

象徴的である。

菅直人は、政権交代の恩人を、検察(高級官僚)・マスコミ連合軍の悪巧みに生け贄として差し出すことで自己の出世欲を満たしたが、今度は、わが日本国の国益を、欧米の金融資本家及び一部の産業資本家に売り渡そうとしている。

こういうのを、売国奴というのではないだろうか。