タガがはずれかけたこの国

NHKの経営委員長が、東京電力の社外取締役との兼任を批判され、兼任は違法ではないとしていったんは続投を表明したものの、数日後に撤回して辞意表明に至るというドタバタ劇を演じたが、辞意表明の記者会見で、経営者は昨日判断したことでも状況が変われば正反対の判断をすることもある、という趣旨の発言をしたという。

「君子豹変」ということだと言いたいのだろうが、それは違う。この程度のことにそんな大仰なことを持ち出したらお天道様に笑われる。いちおう公共放送ということになっているNHKの監督組織の責任者と、個別企業の取締役の立場とが両立し得ないことなど、ちょっと気の利いた人間なら、たとえ中学生でも直ちに分かることだ。

この人物、JFEホールディングスの社長だったそうだが、JFEといえば川崎製鉄と日本鋼管が合併してできた会社だ。この程度の人物でも、日本を代表する製鉄会社の責任者が勤まったとは驚きである。

が、しかし、こんなことにいちいち驚いていては、この国では身が持たないかもしれない。総理大臣をはじめ政府高官から政権党幹部に至るまで、誰一人として公約違反や失政の責任をとろうとしない有様では、たかがNHKの経営委員長ごときが、中学生に引けをとろうとなんだろうとお構いなしなのだろう。

上が上なら下も下、どうもこの国は、タガがはずれかけているらしい。

小沢裁判控訴の愚

5月9日、一審の東京地裁で無罪判決が出た小沢氏の裁判で、検察官役の3人の弁護士が控訴を決めたという。

愚かなことである。

まあ、この弁護士たちの心底としては、功名心であるとか、バカマスコミの作る小沢たたきの風潮に流されてとか、あるいは小沢氏に裁判を引きずらせることで利益を得るエスタブリシュメント連中の意を受けてとか、思惑はさまざまなのだろうが、いずれにしても愚かなことである。

ところで、米国などアングロサクソン流の刑事法体系の下にある国では、一審で無罪判決が出たならば、検察官は控訴できない、すなわち裁判はそれで終わり、判決が確定するという仕組みになっていたと思うが、日本はどうなっているのだろうか。

万事アメリカの猿真似をしているお国柄なのに、こいうことは真似をしないのか。真似をしないのはあれかな、有罪率が100%近いので無罪になることなど想定外なのかな、それとも、裁判が長引いたほうが、判事・検事・弁護士ともども職を失わずにすむからかな。