日本経済新聞の罪と罰

昨日、電車内で乗客が読んでいた日本経済新聞の一面に、「年金給付50兆円突破 名目GDPの1割 1.8人で1人支える」という見出しがあった。

例によって、読者を消費税増税賛成に誘導する、財務省をはじめとする霞ヶ関高級官僚軍団のお先棒担ぎ記事だろうと見当をつけたところ、ビンゴ!大当たり。

日経のサイトにアクセスしたら該当の記事が全文載っていた。

最近、日経はネットの記事配信を一部有料化し、記事によっては最初の段落のみ閲読可能だが、続きを読みたければ金を払え、とまあ、蒲焼きの匂いだけ嗅がせて、お預けを喰わせるようなあこぎな商売をしているが、この記事は全文掲載されていた。この手の洗脳記事については広告宣伝扱いで大盤振る舞いということか。分かりやすいといえば分かりやすいが、まあ、なんとも現金な商売をするねえ、日経さん。ところで、日経のこの有料ネット配信ビジネス、引っかかる人がいるのだろうか。紙媒体はもちろん、ネットでまで、こんなゴミみたいな情報に金を払うなんて、ドブに捨てるようなものだが。

その記事だが、興味のある方はご自分でアクセスしていただくとして、ざっと筋をまとめると、至極簡単、以下の如し。

団塊の世代が年金受給年齢に達したので支払い額が増えた、現役世代の負担が増えるのはたまったもんじゃない、だから現役だろうが引退していようが、誰も彼も所得の多寡に関係なく払わざるを得ない消費税増税しか解決策はない。

と、こんな次第で、とどのつまりは、消費税増税万歳という霞ヶ関高級官僚軍団の提灯持ち記事というわけ。

ブログ主の異議は2点。

第1。

公的年金制度維持のためには、国民が払う保険料だけでは足りない、不足分に税金を投入するとして、その税金をどこからもってくるか。

日経さんは、消費税だ、と叫んでいるわけ。

だがね、霞ヶ関高級官僚軍団の既得権維持必要経費分プラスアメリカ合衆国への見かじめ料をまずはじめに差っ引いて、そのお余りでどうのこうのしようとすりゃあ、税金なんぞいくらあっても足りはしないよ。そんなことは、小学生でもわかる道理だ。なにも池上なにがしを呼んでくるまでもない。

問題はそこだ。この霞ヶ関高級官僚軍団の既得権維持必要経費分プラスアメリカ合衆国への見かじめ料をどうするか、そこのところを切り込まないで、霞ヶ関高級官僚軍団の筋書き通りの御託を並べているんじゃ、財務官僚のお先棒担ぎだの提灯持ちだの言われてもしょうがない。

日経さんよ、あんたがたも、ジャーナリストのはしくれだ、ぐらいに思っているのなら、お得意の調査報道とやらで、国家予算の大胆な組み替えシミュレーションをしたら、こうなりました、だから、年金財政はかくかくしかじかです、といった具合の記事を書いて紙面に載せてごらんよ。

第2。

結果としてこの記事は、年寄りを食わせるために、若い連中が犠牲になるんだ、怒れ! 現役世代よ! という具合に世代間の対立を煽っている。

いけませんなあ、こんなことをしては。マスコミの悪い面のもろ出しだ。

新聞は、報道・評論を稼業としている。評論だから、対象を批判的に取り上げることは当然ある。批判だから、誰も彼も満足する記事ばかりというわけにはいかないだろう。だが、だからといって、霞ヶ関高級官僚軍団の言い分を鵜呑みにして、そのお先棒を担ぎ、国民の間に分裂と対立を招くようなことをしてもいいということには断じてならない。

マスコミというものは、ドッグレースの犬みたいなところがあって、鼻先にダミーの兎だかなんだか、話題や事件をぶら下げられると、わき目もふらず追いかけるという習性をもっている。瓦版屋の昔から変わらない。この習性を、悪意の人物なり集団なりにうまく利用されると、とんでもないことになる。つまり、悪者連中の思うがままに虚偽情報を垂れ流し、読者や国民を間違った方向に誘導することになる。

古くは、ヒットラー率いるナチスの勢力拡大とユダヤ人虐殺。マスコミの皆さんは、知ってか知らずしてか、口を拭って言わないが、いかなヒットラー、ゲッベルスにしても、その言葉を伝える新聞やラジオがなければあんな大悪事を実行しようがなかった。(たしか、世界初のTV中継はナチスドイツの国威発揚のベルリンオリンピックの時ではなかっかたか)

近くは、1990年代の旧ユーゴスラビア紛争。凄惨な宗教・民族対立の修羅があったのだが、そうなるについては、政治指導者による対立を煽る言動を、これでもかとばかり垂れ流したマスコミの存在があった。

身近なところで、わが「政治とカネ」は言うに及ばず。

だから、この稼業にたずさわる皆さんは、そこのところを十二分にわきまえて事に当たらなければならないはずなのだが、「政治とカネ」ひとつとってもまったくできていない。前車の轍を踏まず、どころか、寸分違わず追随しているようにさえ見える。

斯くの如く、霞ヶ関高級官僚軍団の言い分を垂れ流し、結果として、国民の間に深刻な対立と分断を生じるような日本経済新聞の報道は犯罪的である。

彼らの罪は深い。

この罪に対する罰を、お天道様はなんとするだろうか。