ここ数日、西の夕空に水星と金星、火星を見ることができる。
1月3日の午後5時前、パソコンで、Stellariumというフリーのプラネタリウムソフトウェア(筆者はLinux系オペレーティングシステムのUbuntu上で使っている。アップル社のMacオペレーティングシステムやマイクロソフト社のWindowsオペレーティングシステム上でも使えるようだが試したことはない。)を動かしていたら、午後5時ごろから金星と水星が、やや遅れて火星が見えるということなので、双眼鏡を持って外へ出てみた。
金星はすぐに確認できた。さて、水星は。
Stellariumでは、金星のやや右斜め下方すぐのところに見えるはずなのだが、肉眼では確認できない。双眼鏡(対物レンズ径35mm倍率7倍)でそれらしきところを覗くと、針の先ほどに光る点が見えた。もう薄暗くなりかけている東の空を含め全天に星らしきものはいっさい見えないので、まだ明かりの残る西の空に見える針の先ほどの点は惑星、すなわち水星に違いない。
時間が経過するにつれ金星と水星の高度が下がって地平線に近づいてくる。すると、双眼鏡でしか確認できなかった水星が、かろうじて肉眼でも見えるようになってくる。地平線下に沈むまでの10分ほど、輝きを増してくる街の明かりに隠れそうになりながら水星は視野の中にあった。そして見上げると上空には火星が。
コペルニクスは死の床で、水星を見ることができなかったことを悔やんだという。太陽に一番近い惑星である水星は条件が整わないと観察することが難しい。あの大コペルニクスにしてしかり。その水星を、今回、Stellariumに教えられて見ることができた。幸運である。
インターネットというものがあり、それを通じて世界のどこかで、どなたかが苦心して作られたフリーのソフトウェア(オペレーティングシステムのLinuxとその派生型のUbuntu、プラネタリウムソフトウェアのStellariumなど)を使うことができるのはコペルニクスの時代には考えられなかったことである。コペルニクスにあらざるこの自分が、いとも簡単に肉眼で水星を見ることができたのはインターネットのおかげであるといって言い過ぎではないと思う。ありがたいことである。「井戸の水を飲むときは掘った人の苦労を思うべし。」
PS その後1月5日まで天候にも恵まれ、順調に水星を見ることができている。