現政権党にとって「一粒で二度おいしい」拉致問題

拉致の命令者および実行犯である朝鮮民主主義人民共和国国家機関の犯罪性については今は置く。

拉致が発生したときの政権党は現在の政権党である。政権党、すなわち、「電信柱が高いのも郵便ポストが赤いのも」すべて彼らの責任である。いわんや、国民の安全と安心を守るにおいておや。

しかるに、たくさんの国民が拉致された。安全と安心を守れなかった。その責任は、時の政権党にある。

一方の当事者である彼ら政権党が、自分たちの責任については口をつぐんで、もう一方の北朝鮮政府の責任を大声で、しかも拉致被害者を押し立てて言い募ると、ほとんどの国民は、国民を守りきれなかった政権党の責任を意識から落として、拉致はもっぱら北朝鮮だけが悪いと思うようになる。政権党の免責。一度目のおいしさ。

隣国が犯罪国家であるという認識が広く国民の間に行き渡ると、政権党が、平和志向の外交努力を重ねる困難から逃避して、隣国の脅威を名目に、容易に軍備を増強・拡張することができるようになる。あれも要るこれも要る。空母だ、空母に載せる戦闘機だ、というわけ。二度目のおいしさ。

こんなにおいしいものだから、政権党にとって、拉致問題は解決しないほうが自分たちのためになる。ゆえに、拉致被害者の家族のなかからも、政権党は本気で解決するつもりがないのだと批判が出てくる。そりゃそうでしょう。こういう事情は、見える人にはちゃんと見えるわけで(あるいは、見ようと多少の努力をすれば、見えるようになるわけですが…)。