タガがはずれかけたこの国

NHKの経営委員長が、東京電力の社外取締役との兼任を批判され、兼任は違法ではないとしていったんは続投を表明したものの、数日後に撤回して辞意表明に至るというドタバタ劇を演じたが、辞意表明の記者会見で、経営者は昨日判断したことでも状況が変われば正反対の判断をすることもある、という趣旨の発言をしたという。

「君子豹変」ということだと言いたいのだろうが、それは違う。この程度のことにそんな大仰なことを持ち出したらお天道様に笑われる。いちおう公共放送ということになっているNHKの監督組織の責任者と、個別企業の取締役の立場とが両立し得ないことなど、ちょっと気の利いた人間なら、たとえ中学生でも直ちに分かることだ。

この人物、JFEホールディングスの社長だったそうだが、JFEといえば川崎製鉄と日本鋼管が合併してできた会社だ。この程度の人物でも、日本を代表する製鉄会社の責任者が勤まったとは驚きである。

が、しかし、こんなことにいちいち驚いていては、この国では身が持たないかもしれない。総理大臣をはじめ政府高官から政権党幹部に至るまで、誰一人として公約違反や失政の責任をとろうとしない有様では、たかがNHKの経営委員長ごときが、中学生に引けをとろうとなんだろうとお構いなしなのだろう。

上が上なら下も下、どうもこの国は、タガがはずれかけているらしい。

東京電力の社長というもの

東京電力の社長が、病気を理由に入院しているそうだ。こんな時に。

彼は、いくら報酬を得ていたのか。それに、個室、秘書、運転手付き専用車。これらは、すべて、まさしく、このような時に、この難事を乗り越えるために、間違いのない的確な判断をして、率先遂行、陣頭指揮をするために与えられたものであったのではないのか。

それが、この体たらく。彼は、昨日今日、東電の役員になったのではないだろう。いわゆる生え抜きということのようなので役員・社長となる前に長い東電社員としてのキャリアがあったものと思われる。この間どんな経歴を積んだのか。その経歴を誰がどう評価して、トップに据えたのか。

このようないい加減きわまりない人物を社長にする東電という会社が、地域独占の電力供給企業としてわれわれのライフラインを握っていたのだ。

あな恐ろし、あきつしま大和の国は。