ある過労自殺

『阿修羅』という投稿サイトを見ていたら、「『ワタミで飲まない会』入会のご案内」という投稿が目にとまった。

その投稿は、4年前、ワタミフードサービス経営の居酒屋に勤めていた当時26歳の女性の入社2ヶ月での自殺が、月100時間以上に及ぶ残業や休憩・休日も十分に取れないなど「業務による心理的負荷が主因となって精神障害を発病した」ことによるものと、神奈川の労災補償保険審査官がこの2月になって認定したことを紹介し、このことへのワタミフードサービス・渡邉美樹会長の言動を批判する内容だ。

この投稿によると、自殺した女性の残業は月140時間にもなったという。140時間! 週5日・月20日として一日あたり7時間、しかも休憩・休日も十分取れなかったというのだから、その苦しさはどんなものだったろう。この女性の心中を思うと涙がこぼれそうになる。

ご冥福をお祈りするとともに、ご遺族にはお悔やみを申し上げます。

片や渡邉氏。投稿によると、「労務管理できていなかったとの認識はありません。」とツイート。数年前に出演したTV番組「カンブリア宮殿」では「無理というのは嘘つきの言葉、途中でやめるから無理になる、やめさせないで鼻血を出そうがぶっ倒れようが1週間全力でやらせる、そうすればその人は無理とは口が裂けても言えない。」などと述べて司会者を唖然とさせている。

こういう考えの人物が経営者である企業であれば、この女性のような犠牲者が出るのも必然ということだろう。この会社がブラック企業と呼ばれるのも当然だ。投稿によると、この渡邉という人、東京都知事選挙に出馬したとき「自殺ゼロの社会」を訴えていたという。まさにブラックユーモアである。

人間を人間として扱わない企業及びその経営者、そのような企業の経営者を現代のヒーローであるかのように持ち上げるマスコミ、これらは犯罪者と言ってよい。

かつて、マルクスは人間労働を極限まで搾り取るシステムを資本制的生産様式、その搾り取る側の主役を資本家と呼び、その非人間的性格を余すところなく分析したが、この渡邉という人、まさにマルクスの言う資本家そのものではないか。

ソ連などの社会主義国家が前世紀末に崩壊してから、「マルクスは死んだ」などと叫び回るお調子者が現れたが、マルクスは死んでなどいない。

マルクスが分析対象としたのは19世紀の、主にイギリスの資本主義経済だったが、それが抱えていた非人間的性格は、21世紀の資本主義経済、すなわち現代世界を覆わんとしているグローバル経済化現象・市場万能主義的経済の非人間的性格にそのまま受け継がれ、ますます熾烈さを増している。

この状況に対して、人間とその生活をどう守るかは現代社会の最優先の課題である。かつて19世紀に、マルクスが資本制的生産様式から人間とその生活を守ることを課題としたように。

マルクスは、決して、死んでなどいない。