“生活習慣病”というコトバのイデオロギー性について

コロナ禍以来、医療関係の情報源として重宝しているオンラインメディアBuzzFeed Japan Medicalバズフィードジャパン・メディカルに、岩永直子記者の東京大学大学院行動社会医学講座教授・橋本英樹氏へのインタビューが載っている(6月10日・11日付)。

“生活習慣病 life style disease”というコトバは、健康は”自己責任”であるという主張を含む。これが使われるようになった背景として、レーガノミックスやサッチャリズムなどに代表される貧富格差の自己責任論がある。貧しいものは努力が足りないからそうなったのと同じく、病気になるのは本人の努力が足りないつまり自己管理が悪いからだというわけ。

これに対して橋本氏は、病気の遺伝的要因とともに、「健康の社会的決定要因」という概念の重要性を指摘し、「人の生活習慣は、知識や意識だけで左右できない他の要素がある…つまり環境の影響です」とする。

だとすると、”生活習慣病”と呼ばれる疾患を自己責任論の臭みがあるそのようなコトバで呼称するのは不適当ではないか。ではどう変える。橋本氏は「「非感染性疾患(Non-communicable diseases、NCDs)です。国際的にはこれで通る公式用語です。「生活習慣病」と公式な場で使っているのは日本だけです。」

目からウロコ。これからは”生活習慣病”はやめて非感染性疾患を使うことにしよう。ところで、この他に、厚生労働省を先頭に、中央・地方をあげて取り組んでいるいわゆるメタボ健診、特定健康診査(以下特定健診)への疑問も取り上げている。たとえば地方自治体が特定健診の受診率を上げるために注いでいる時間と労力(橋本氏の表現では「血道を上げている」)はそれに見合った成果につながっているのか。虐待問題や社会的に孤立しがちな人たちへのアプローチなどに振り向けたほうが得策なのではないかという指摘など、なるほどと思う。