片山善博『知事の真贋』

文春新書 2020年11月刊。2月末に読む。書中、いくつか、記憶しておくべきことあり。以下に摘記。

一つ、コロナ禍中、大阪府の知事が、営業を続けるパチンコ店の店名を「私は公表しなければならないと義務づけられています」と言って公表したのは新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)の解釈を誤っているという指摘。

特措法第45条は、非常事態宣言が出された時、知事は、営業自粛などの要請をして正当な理由がないのに応じなければ指示することができ、これらの要請や指示をした場合には「遅滞なく、その旨を公表しなければならない」と定めている。つまり、知事には、営業自粛要請のような私権の制限にかかわる重大決定をした時には直ちに公開することを義務づけているのであって、要請に従わなかった店名を公表することを義務づけているのではない。(73ページ)

ここから先は、自分の解釈。それを、大阪の知事は、まるで反対に解釈して、魔女狩りのごとくに店名を公表した。知事本人にリーガルマインドが欠如していて法律の解釈を誤ったのだとしても、副知事以下の府庁官僚機構にはちゃんと解釈できるスタッフもいただろうから、どうして適切な補佐・助言ができなかったのか。余計なことを言って不利益になるのは怖いという保身か、それとも、しようとしたが、知事には受けつけようとしない姿勢があったのか。

二つ、著者が自治省勤務時代、大臣になった梶山静六の秘書官を務めたときのこと。

「その梶山さんがいつも言っていたのは、「政治というものは、力の弱い人や声の小さい人に目配りすることが大切だ。強い連中は自分でドンドン前に進んでいくからほうっておけばいい。しかし、弱い人は手を引っ張ったり、背中を押してあげたりしなければ、自分だけでは前に進めない」ということでした。私は後年鳥取県で知事を務めるようになった時、この梶山さんの教えを拳々服膺して仕事に励みました。」(159頁)

なるほど。

東京大空襲と東日本大震災

昨日3月10日は東京大空襲から76年目、で、今日は東日本大震災から10年目。

東日本大震災については、あれこれの報道が。だが、昨日の東京大空襲はさっぱり。東京都民の一人として、一晩で10万人の方が亡くなった空襲については、その責任の所在を含めてけっして忘れることはできない。

しかし、報道ぶりに見られるように、世間ではほとんど忘れられているようだ。こうして、戦争の記憶が風化して、次の戦争へと世間はなびいていくのだろうか。災害は忘れた頃にやってくるが、戦争も忘れた頃にやってくる。

わが国の保守エスタブリッシュメントは国益を破壊している

このたびのオリンピック組織委員会会長の”失言”が明らかにしたのは、二たこと目には「国益」を叫ぶ彼ら保守支配層が、じつは最大の国益破壊者なのだということだ。

眼の前で起こっていてちゃんと見れば誰にだって分かる両性平等の滔々たる流れに、ほんの1ミリも気づいていない無能無感覚。そこから発する時代錯誤の発言の数々。まるで日本が、女性差別あるいは人権無視がまかり通る野蛮国だと自ら宣伝しているようではないか。

こういう野蛮国宣伝が、どれだけ日本国民の評価すなわち国益を貶めているか。少しでも考えたことがあるのか、この連中は。また、こういう連中をいつまでものさばらせている面々。その中には、オリンピック協賛企業に名を連ねることでこの連中の企みに手を貸す大手メディアも含まれている。

老害オリンピック

第2次東京オリンピック主催者の組織委員会会長が辞める。遅すぎだよ。あの発言後、24時間以内に辞めさせなくちゃいけなかった。それができない今の日本政府。

いつまでも地位にしがみつく人間の言い草は決まっている。代わりがいないというもの。そんなこたあない。いくらでも代わりはいる。いないと思っているのは本人だけだ。本人が気が付かないのなら、猫の首に鈴を着ける役を誰かがやらなくちゃいけないんだが、今回その役は首相が務めるべきだった。それができない。いや、そんなこともできない。今の首相の判断力のなさ。暗澹たるものあり。

しかし老害だな。やめた人間も80歳超、代わりの人間も80歳超。組織の責任者としてまっとうな判断ができるのは、まあ、65歳、延ばして70歳まででしょう。それを80歳超!

「神の国」失言の元首相がうっかり本音を漏らす

女性蔑視の発言を失言と大手メディアは伝えるが、失言ではなく本音でしょう。

この人、北陸の造り酒屋の出身だっと思うが、できることは一地方の旧態依然としたムラ政治を動かすことくらいだろう。人口一億人を超える国の総責任者などは土台無理な話だったんだな。

ところで、こんな人物を会長に担いでやるオリンピックって、いったい何なのよ。ゼネコン・広告産業・大手メディア複合体の、による、のための仕事づくり。アスリートのためのとかなんとか、美辞麗句でごまかしてはいけない。

米国民はミャンマーのクーデタを未熟な民主政治と笑うことができるか

昨年おこなわれた選挙後初の議会招集日当日、軍が与党指導者らを拘束したクーデタのこと。軍が掲げる理由は、選挙に不正があったから正すというもの。

これ、どこかで聞いたせりふですね。そう、米国の大統領選挙結果について、落選した前大統領がさかんに言いふらしていました。これに煽られた前大統領支持者の一部が議会に乱入して死者まで出た騒ぎは耳目に新しい。

こういう”前科”のある米国の人々は、民主政治が未熟だからクーデタが起きるんだと笑うことができるでしょうか。いや、できないですよね。もしやったら、それはそのまま彼らに返ってくることは疑いない。

入院拒否の新型コロナ感染者に懲役刑を課すという発想がそもそも異常

国会で審議中の新型コロナ特別措置法案から、入院拒否した感染者に懲役刑を課す罰則を削除することを与党が認めたという。

削除は当たり前だが、それよりも、案の段階で感染者すなわち患者に懲役刑を課すことを入れたこと自体が異常なんだよ。なにも好き好んでコロナに感染したわけではあるまい。入院しろと言われたって色々事情のある人もいるんだろうし、そもそも現状では入先のベッドがなくて入院したくてもできない人もいるんだろう。そういう人たちに対して懲役刑で脅して言うことを聞かせようというこの上から目線、お前らシモジモはオレたち権力者の言うことを聞いて当然という傲慢さ。それでいて自分たちは夜遅くまで銀座のクラブでつるんで遊ぶというノーテンキ。

いったい、今の政府与党はなにを考えているんだ。いや、なにも考えちゃいないのか。

オリンピックというものは選手の夢を叶えるためにやるものなのですか

IOCの会長だか誰だかが、コロナで開催が危ぶまれているオリンピック東京大会について、選手の夢を叶えるためにも断固開催するという趣旨の発言をした。

だとしたら、選手たちとその関係者がお金を払って自腹で競技会をやってください。1兆6440億円もの大金(2020年12月大会組織委員会発表、その多くは税金)を使ってやるのはやめてください。人のふんどしで相撲を取るなよ。

米国政治の混迷

7日のトランプ支持者米国議会議事堂乱入事件。

朝のNHKBSで、米国ABCが乱入参加者の事後の表情と声を伝える。高揚感にあふれ正しいことをしたという満足感。英国BBCの報道、ドイツの連邦宰相メルケルが、1933年のナチスによる国会放火事件になぞらえている。ちょっと違うんじゃないかな。あちらは、事件当時、真犯人はナチスであるにも関わらず共産党員のせいにしたが、こちらは白昼堂々テレビカメラの前でやっている。

ロイター通信が伝える1月7日現在の大統領選開票結果。バイデン8128万票(51.3%)、トランプ7422万票(46.8%)。国論二分状態。両方が正義を主張するとなると、残されたのは力による解決、すなわち内戦への突入。トランプ支持者が高揚感に満ちているのはこれからの戦いに興奮しているからだろう。実際に始まれば、綺麗事ではすまず、この連中の大多数は後悔することになるのだろうが。

一連の報道映像を見ていて、既視感がある。そう、さしたる理由なく両陣営に分かれて戦闘場面を繰り広げるのを売り物にするハリウッド映画。乱入参加者は、そういう映画の一場面を再演しているつもりなのかもしれない。観客の存在を前提にした劇場型内戦。