エジプト情勢とアメリカの忠実な番犬である日本経済新聞

エジプト人でタレントのフィフィさんが、自身のブログで、エジプトの反ムバラク運動について熱い思いを語っている。

フィフィさんによれば、今、エジプトで起こっていることは、一義的にはムバラク政権打倒の民衆蜂起だが、ムバラク追放を求める民衆の心には、ムバラク政権を背後で支えているアメリカへの怒りがあり、アメリカはエジプトにかまわないでくれ、中東に介入しないでくれ、というのがその怒りの中身なのだという。

これを、ブログ主流に解釈すれば、アメリカは、中東の石油利権を押さえておきたい、そのためにはイスラエル国家というアメリカに忠実な橋頭堡をこの地に確保しておきたい、イスラエルと良好な関係をもつエジプトのムバラク政権も、したがってアメリカにとっては重要な駒の一つだから、30年間も権力を握り続けている独裁政権であっても、イラクのフセイン政権に対してとは異なり、片目どころか両目ともつぶって、手を握り続けたというわけなのだろう。

これは、自分に都合の悪い独裁政権は大量破壊兵器を隠し持っていると言いがかりをつけて大軍をもって攻め込み崩壊させるが、自分に都合の良い独裁政権は支援するという、例によって例のごとくの、「自由と民主主義」の本家本元を自称するアメリカ合衆国のご都合主義だ。

今、エジプト起きていることは、この、アメリカの偽善と、その偽善に支えられた自国の腐敗独裁政権への怒りが根底にあるというフィフィさんの指摘は、そのとおりだと思う。この、フィフィさんの、エジプトを愛するエジプト人としてのブログでの発言には感心した。

ところで、アメリカの偽善的な振る舞いを、忠実な番犬のごとく、アメリカの側に立って報道する新聞がある。

いえ? アメリカの新聞ではありません、日本の新聞だ。そう、日本経済新聞。

4日、ネット配信された「カイロ=花房良祐」と署名された記事。カイロにいる花房という人が書いた記事と言うことでしょうな。

記事の見出しは、なぜか、数時間のうちに、「エジプト、反体制派が大規模デモ 「退陣の金曜日」と気勢」から、「エジプト、大規模デモ 大統領退陣求め「最後通告」」へと変わった。

その記事中の一文、「政権側と反体制派の溝は埋まっていない。ムバラク大統領は3日、辞任は混乱を招くとして任期満了まで職にとどまることに理解を求めた。」

「理解を求めた」?

誰に理解を求めたのだ。書いてないじゃないか。欠陥文章だよ。こんな文章をそのまま出稿した取材記者、それを見過ごした外信部だか外報部だかの担当デスク、それをチェックできなかった記事審査部だか校閲部。新聞の基本中の基本である記事の文章そのもので、こんな初歩的なミスを平然とやらかす日本経済新聞。

極めつけは、次の一文。

「1日には全土で100万人規模の抗議デモが発生したがムバラク大統領は次期大統領選への不出馬を表明したのみで即時辞任は拒否した。ただ一部の市民や観光産業に従事する関係者は都市機能のマヒにつながっている抗議デモにいら立ちを募らせており、大統領側も「混乱より安定が重要」と強調、沈静化を図っている。」

「一部の市民」って何?

市民ってことでくくられる人は沢山いる。反ムバラク派も親ムバラク派も同じく市民だが、花房君、君が話を聞いたのは、どっちなのかね。都合良く、自分の主観を記事に塗り込めながら、「一部の市民」などとさももっともらしく客観を装う詐欺的行為をしちゃいかんよ。

「観光産業に従事する関係者」?

花房君かまたは家族が日本に帰ろうとして航空券を買いに立ち寄った旅行代理店の窓口担当者が、たまたま、飛行機の予約は混雑してますよ、と渋い顔で言ったのを、花房君の主観で勝手に解釈して「いら立ちを募らせて」いることにしちゃったんじなあないのか。君はフィクションをつくるのがうまいね。

「沈静化を図っている」?

沈静化を図ってほしい、と花房君が願っているということじゃないのかい。そんなに、君は、ムバラク政権が、ということは、エジプトにおけるアメリカの支配が続いてい欲しいと願っているのか。

とまあ、わずか数行の記事にも、体制の、ということはアメリカに支持されてきたムバラク政権に肩入れしようとする気分が丸出しになる文章を書く人間が取材記者としており、その記事を何のためらいもなく配信する日本経済新聞社。

こういうのをアメリカの番犬と言わずして他になんと言う。

こんな新聞を、高い金を払って読まされている読者こそ、いい面の皮だ。